慢性期の多発性〜全頭型円形脱毛症に適応がある、世界標準といえる治療法ですが、残念ながら日本では保険適応の認可が下りていないので自費診療になるのが難点です。頭部にかぶれを起こさせることにより発毛を促すという原理を利用します。
【原 理】
SADBE(squalic acid dibutyl ester)もしくはDPCP(diphenylcyclopropenone)という物質は自然界には存在しない化学合成試薬です。この物質は健常な人間が触れると必ずかぶれるという特徴を持っています。円形脱毛症は自分の毛根を自分の白血球が攻撃することが原因で発症する病気です。かぶれを起こさせることによってこの自分を攻撃するリンパ球に対してこれを抑制するリンパ球を呼び寄せます。結果として自分を攻撃するリンパ球の作用を減弱させ、発毛を促すという薬剤です。
【施術法】
- 感作
SADBEもしくはDPCPの2%溶液を頭部の脱毛部に貼りつけます。およそ48時間後にご自身ではがして通常通りシャンプーや石鹸で洗い流してください。この時点では何も起こっていません。48時間のうちに耐えられないかゆみが出現したときは、無理をせず早めにはがして処方されているローションを頻回に塗ってください。テープがかゆいくらいはがんばってそのまま48時間貼り続けてください。1〜2週後同部が赤く腫れてきます。これでご自身のリンパ球がこの物質を嫌いと覚えたことになり、この状態を感作成立といいます。
- 施術
2〜3週後より頭部全体に薬剤を塗ります。通常2万分の1という低濃度から外用を開始し、徐々に濃度を上げていきます。少しうすら痒い、少しフケが出る、頭皮がうっすら赤みを帯びるくらいがちょうど良い濃度です。濃度が決定したら2〜3週に1度塗布を繰り返します。効果判定は濃度が決まってから1〜2ヶ月後に行います。
- 期待される効果
発毛が認められる場合上記Aを継続します。毛髪が生えそろったら徐々に外用回数を減らしていきます。4週に1回→6週に1回→8週に1回といった具合です。
- 経過中、急激な脱毛の再燃が見られた場合
直ちに来院してください。症状により短期ステロイド全身投与を行う場合があります。
- 予想される副作用とその対策
頭皮のかぶれが強すぎた場合―あらかじめお渡ししてあるステロイドの外用剤を一日何回でもかまいませんので塗布してください。かゆみが顔面全体や全身に拡大した場合はステロイド内服も併用してください。アトピー性皮膚炎をお持ちの場合、このような反応が起こる確率が一般の人より高い傾向にあります。
蕁麻疹―軽症の場合は抗ヒスタミン薬の内服を併用してコントロールしながら外用を続けます。